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Profile

1993年に入社し、アプリケーション開発からインフラ設計・構築、プロジェクトマネジメントを経験。電力小売全面自由化対応やクラウド推進、アジャイル開発の内製化組織部門長などを務めた後、2025年より常務執行役員としてエンタープライズアーキテクチャ(以下:EA)構築を推進。

東京ガスグループ内の、ITコンサルティングチームとして

東京ガスiネットは、東京ガスの中でどのような役割を担っているのでしょうか?

エネルギーの開発から供給・販売に至るまで、幅広いバリューチェーンを持つ東京ガス。そのIT領域を一手に担い、全社の業務をシステムの力で支えているのが東京ガスiネットです。ガス・電気の需給管理システムや顧客管理システム、お客さま向けのWeb会員サービスの開発、さらには地震防災システムや脱炭素化を目指す新たな電力システムなど、社内外に向けたさまざまなシステム構築・運用を手がけています。

VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)とは、個人や企業などが所有する分散型の小規模発電設備や蓄電池、電気自動車などをIT技術により統合的に管理し、需給バランスを調整することで電力の安定供給を実現する仕組みです。
東京ガスは、各所での電力の使用状況や発電量を予測・遠隔管理し、電力取引市場の動向も踏まえて最適な運用を目指しています。これにより、社会全体の電力利用の最適化や、CO₂排出削減による低炭素社会の実現に貢献します。

そんな東京ガスiネットの特徴は、課題解決を行うITコンサルタントとしての役割を担っている点。事業部門から依頼されたとおりにシステムをつくるのではなく、潜在的な課題の発掘から目指すべきゴールのすり合わせまで伴走することで、戦略的な課題解決を行っているのです。こうした動きができるのは、東京ガスのグループ会社という立場だからこそ。事業部門と率直なコミュニケーションを図ることができる距離感にあるため、本質的な課題とは何か、そもそもシステムをつくる必要があるのかといった部分から入り込むことができるのです。実際に「これってITでどうにかできますか?」「ちょっとIT専門家の意見を聞きたいです」といった相談が、日常的に事業部門から寄せられています。

新しいビジネスを提供するために、システムを抜本的に変えていく

今後のIT戦略について教えてください。

これまで東京ガスiネットでは、寄せられた相談に合わせて都度最適なシステムを導入してきました。しかし昨今は「複数のサービスをご契約されているお客さまの情報を一元管理したい」「新しいビジネスを生み出したいが、現状のシステムだと耐えられないかもしれない」といった複雑かつ難易度の高い相談が多く寄せられるようになってきています。こうした声に応えるためには、システム全体の抜本的な変革が必要不可欠です。

また、東京ガスが新たなビジネス創出に全力で取り組んでいる以上、私たちはその挑戦を後押しできる盤石なシステムを生み出さなくてはいけない。そこで意を決し、2024年度からEAの構築に取り組みはじめました。EAとは業務、データ、アプリケーション、インフラといった構成要素を体系的に整理し、将来を見据えた全体最適の姿を描くための手法です。例えばデータの場合、商材ごとに分散して管理するのではなく、一元的に集約することで業務間の連携をスムーズにし、重複作業や情報の不整合も防げます。

このEAの構築を進めるにあたり、常に大切にしているのはゴールを一度描いて終わりにしないことです。どれほど綿密に設計しても思い通りの未来は訪れません。技術も価値観も社会情勢も日々変わっていく中で、そのときの環境や条件に合わせて最適なゴールを描き直すための議論を進めています。また、EAの目的はシステムを変えることではなく、ビジネスが円滑に進む状態をつくること。そのため事業部と定期的に打ち合わせを行い、どんな社会を目指すのか、お客さまにどのような価値を届けたいのかをゼロベースで話し合い、自分たちが描くゴールと提供価値にズレが出ていないか日々確認しています。

根底にある、安心・安全を支えるという使命はブレない

EAを構築するために、具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか?

EAの構築に必要なステップを、現状整理、システムの構想設計、各種システムの統合、システム全体の最適化の大きく4つに分け、ゴール達成に向けて段階的に進めています。

2024年度は現状整理を行い、すべての事業領域における現状システムの構造を徹底的に可視化しました。どこにどんなシステムがあり、どうつながっているのか。そうした全体像を正確に捉えることで課題を洗い出していったのです。現在は次のステップとして、業務、データ、アプリケーション、インフラのつなぎ方やそれぞれの運用体制など、システムの構想設計を行っています。

これらの取り組みに挑んでいるのは、東京ガスiネットが社会インフラを支える企業だからこそ。当たり前を守りつつ、新しい社会に適合するために進化し続ける必要があるのです。逆に言えば、どれほど画期的なシステムを導入したとしても、システムエラーなどによってお客さまの信頼が揺らいでしまっては意味がありません。お湯が出る、火が使えるといった当たり前を途切れさせないことを大前提に、より安心・安全な暮らしを届けるための一歩を踏み出し続ける。そうした攻めと守りを高次元で追求していくことで、東京ガスiネットをさらに成長させていきたいと考えています。

常識や経験にとらわれない、自由なアイデアを求む

東京ガスiネットに興味を持つ方へメッセージをお願いします。

ここまで話してきたように、東京ガスiネットはシステムも組織も大きな変革期にあります。そして当社だけでなく、社会全体も急速に変化し続けている。これからは、従来の常識や経験だけでは解決しない課題が次々生まれてくるはずです。そうした変化の激しい時代だからこそ、これまでにない視点や常識を越えるアイデア、そして広い視野を持つことが新しい突破口になると私は確信しています。これから入社される方々の持つ、フレッシュな視点をぜひ活かしていただければと思います。

その点、当社には若手の挑戦を応援する風土が根付いています。私自身、電力小売全面自由化プロジェクトや事業設立支援など多くのプロジェクトに携わらせてもらいましたが、どんなときも周囲が「やってみなよ」と背中を押してくれました。今後は、そうした挑戦への許容度をさらに高めていける組織へと進化させたいと考えています。新しい発想を生み出したい方、自分の力を試したい方には、東京ガスiネットは最適なフィールドです。

恐れずに一歩踏み出し、新しい時代の安心・安全をともに支えていきましょう。